豪雨時の防災情報を住民が直感的に理解できるように危険度を5段階で示す「警戒レベル」を導入した国のガイドラインが、かえって住民の混乱を招いている。
 2019年6月28日~7月3日に九州南部を襲った記録的な大雨で、鹿児島市がガイドラインに基づいて市内全域に避難指示を出した際に、住民から「全員が避難所に行くのか」などの問い合わせが相次いだ。
2019年6月28日~7月3日の大雨で、鹿児島市では土砂災害が発生した(写真:鹿児島市)
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 鹿児島市は当時、崖や河川に近い場所など、危険な地域に住む人に対して直ちに避難するよう呼び掛けていた。しかし、避難指示がガイドラインで「全員避難」に当たる警戒レベル4に含まれるため、住民がその趣旨を誤解。増水した河川を渡るという危険を冒してまで避難所にやってくる人もいた。
 19年3月から新たに導入された警戒レベルの大きな特徴は、レベル4を「全員避難」と明確に位置付けたことだ。ただし、公的な避難場所までの移動が危険と思われる場合は、近くの安全な場所や自宅内のより安全な場所に避難する。避難指示の趣旨を誤解する住民がいたのは、レベル4の「全員避難」の文言だけが独り歩きしているためとみられる。
警戒レベルの概要。レベル4の「全員避難」は、必ずしも全員に自宅外への避難を求めているわけではない。赤枠は日経コンストラクションが加筆(資料:内閣府)
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 その一方で、「全員避難」のレベル4の情報が出ても、避難行動を起こさない住民も多かった。
 ガイドラインでは、避難勧告を避難指示と同じレベル4に位置付けている。過去の災害で、勧告が出ても次の段階の指示を待って逃げ遅れる人がいたからだ。そこで、勧告と指示の違いによらず、すぐに避難を始めるように両者を同じレベルに設定した。この点がまだ住民に浸透していないようだ。
 鹿児島市が7月1日から2日にかけて市内9地域に段階的に避難勧告を出した際には、避難所への避難者数は最も多い時間帯でも150人程度だった。ところが、3日の避難指示の直後に790人へと急増。4日には、最大3500人近くにまで増えている。 

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